半導体にはキャリア(電子や正孔)の理解が必須です。
今回取り扱う状態密度は、いわば電子や正孔が入ることのできる席のことです。
この状態密度はキャリア密度を求めるうえで必須になります。
状態密度の定義とは?
じつは最初のころ、筆者も状態密度の定義にかなり理解に苦しみました。。。
ただしめちゃくちゃ重要な部分なのでここはしっかり知っておきましょう。
状態密度の定義は以下の通りです。
単位体積当たりの単位エネルギー領域に対する電子の量子状態数
つまり単位体積で切り出してある範囲のエネルギーを切り出したときの席数はいくつあるのか??という定義です。
「????」ですね。。
例えば、建物に部屋がたくさんあるとして、それぞれの部屋に一人ずつしか入れないとしましょう。どの部屋にも同じくらい人が入ることができるわけではなく、広い部屋には多くの人が集まり、狭い部屋には少数しか入れません。これと似たような感覚で、電子もエネルギーに応じて「入りやすい状態」と「入りにくい状態」があります。状態密度は、その「入りやすさ」をエネルギーごとに表したものと考えるとわかりやすいです。
状態密度を導出してみる!
さっそく状態密度を求めてみましょう。
エネルギーの導出
まず3次元空間にある電子のエネルギーを考えます。
一辺の長さがLの箱に1つの電子が閉じ込められているモデルを考えます。
この時、電子が存在するには以下の3つの制約があります。
1.シュレディンガー方程式
シュレディンガー方程式 EΦ(r)=HΦ(r) が成り立つ
2.境界条件
境界(立方体の角)で存在することはない
3.パウリの排他律
すべてのΦ(x)は異なる状態をとる。
以上の条件からこの中に入る電子のエネルギーを計算していきます。
1番目の条件からシュレディンガー方程式は
$$-\frac{ħ^2}{2m}(\frac{\partial^2 }{\partial x^2}+\frac{\partial^2 }{\partial x^2}+\frac{\partial^2 }{\partial x^2})Φ(r)=EΦ(r)$$
とかけます。
また3番目の条件から
$$Φ(r)=X(x)・Y(y)・Z(z)$$
と置いてみましょう。
そうすると
$$-\frac{ħ^2}{2m} \frac{X”}{X}-\frac{ħ^2}{2m} \frac{Y”}{Y}-\frac{ħ^2}{2m} \frac{Z”}{Z}=E$$
それぞれを下記のように書き換えます。
$$E_x+E_y+E_z=E$$
X,Y,Zはそれぞれ独立な関数になるので、それぞれの関数ごとにエネルギーを求めていきます。
$$-\frac{ħ^2}{2m} \frac{d^2X}{dX^2}=E_x X・・①$$
を解いていきましょう!
上の微分方程式を解くと。
$$X(x)=Asin(k_xX)$$
また境界条件よりx=0 とx=Lの時X(x)が0になります。
これを解くと
$$k_x=\frac{πn}{L}$$
になります。①に代入すると
$$A=\sqrt{\frac{2}{L}}$$
$$E_x=\frac{ħ^2(k_x)^2}{2m}$$
となります。
YもZも同様に求めると
$$Φ(r)=\sqrt{\frac{8}{L^3}}sin(k_xx)sin(k_yy)xin(k_zz)$$
$$k_x=\frac{πn_x}{L},k_y=\frac{πn_y}{L},k_z=\frac{πn_z}{L}$$
という結果より
$$ E(n_x,n_y,n_y)=\frac{ħ^2}{2m} (\frac{π}{L})^2 (n_x^2+n_y^2+n_z^2)$$
$$n_x,n_y,n_z は自然数$$
という風に求められます。
電子数導出
先ほど求めた3次元の電子のエネルギーの式を変形すると下記に書き換えることが出来ます。
$$ n_x^2+n_y^2+n_z^2=\frac{2m}{ħ^2} (\frac{L}{π})^2 E$$
$$n_x,n_y,n_z は自然数$$
この式なんだか見覚え有りませんか?
そう球の式です!!
$$n_x,n_y,n_z$$
は自然数なので図にすると以下のようになります。
$$n_x, n_y, n_z$$
を軸にする半径
$$ \frac{\sqrt{2m}}{ħ} (\frac{L}{π}) \sqrt{E}$$
の球です。
$$n_x, n_y, n_z \geq 0$$
なので1/8球の見た目をしています。
$n_x=1,n_y=1,n_z=1$ の点を頂点に取っていくと体積1の立方体ができます。
これが粒子数と対応しています。
ではこの1/8球の体積を求めてみましょう。
すると体積は
$$\frac{1}{8} \times \frac{4π}{3} \times ( \frac{2m}{ħ^2} (\frac{L}{π})^2 E )^\frac{3}{2} $$
となりますね!!
この体積はE以下のエネルギーを持つ粒子の数です。実際に席に座ることのできる電子は↑アップスピンと↓ダウンスピンと2種類あります。
ということで実際の電子数(N)は
$$N=2 \times \frac{1}{8} \times \frac{4π}{3} \times ( \frac{2m}{ħ^2} (\frac{L}{π})^2 E )^\frac{3}{2} $$
で求められます。
状態密度の算出
ここまでこれば後は作業で求められます。
1.まずは単位体積当たりの電子数を求める
Nを今回の体積¥L^3¥で割ってやりましょう
$$\frac{N}{L^3}=\frac{π}{3} (\frac{2m}{(ħπ)^2}E)^\frac{3}{2}$$
2.単位エネルギー当たりの状態数を求める
最後に今求めた式をEで微分しましょう!!そうすると
$$g(E)=\frac{dN}{dE}=\frac{1}{2π^2} (\frac{2m}{ħ^2})^\frac{3}{2} E^\frac{1}{2}$$
となります。
これが状態密度となります!!
この状態密度の式をグラフにしてみました。
このグラフからもわかるようにエネルギーが小さいうちは状態数は急増しますがだんだんと増加量も減少してきます。
まとめ
以上状態密度の導出をしました。今回のまとめです。
・エネルギーの計算
$$ E(n_x,n_y,n_y)=\frac{ħ^2}{2m} (\frac{π}{L})^2 (n_x^2+n_y^2+n_z^2)$$
・式変形による電子数の導出
$$ E(n_x,n_y,n_y)=\frac{ħ^2}{2m} (\frac{π}{L})^2 (n_x^2+n_y^2+n_z^2)$$
・状態密度の算出 (電子数から単位体積当たりのエネルギー微分)
$$g(E)=\frac{dN}{dE}=\frac{1}{2π^2} (\frac{2m}{ħ^2})^\frac{3}{2} E^\frac{1}{2}$$
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