バンドギャップは半導体で電気の動きを考えるときに必須の項目になります。
今回はそんなバンドギャップについて理解していきましょう!
バンドギャップとは?
よく聞くバンドギャップについて分かりやすく解説していきたいと思います。
バンドギャップとは一言でいうと電子が動けるようになるために必要なエネルギーのことを言います。
半導体は下のような図のように、通常結晶として隣り合う原子と結合して存在しています。
例えばSiは4価つまり1原子当たり4つの電子を持っています。そのためこのように周囲4つの原子と1個ずつ電子を共有しあう共有結合と呼ばれる結合方法で結びつきます。
電子はこの結合などに使用されているのですが、熱や光を加えると自由に動けるようになります。
この安定した電子を自由に動く電子にするの必要なエネルギーがバンドギャップです。
バンド図とは
半導体の世界ではこのエネルギーの大きさを可視化する方法として下のようなバンド図を書きます。
上の図でEcは伝導帯、Evは価電子帯を表しています。
Ecはconduction band ,Evは valence bandのエネルギーを示しています。
伝導帯は高いエネルギーの自由に動き回る電子が存在する領域です。
価電子帯は実際に結合に寄与している安定な電子が存在する領域です。
ルールとして上に高いエネルギーが来るように書きます。下にある電子程エネルギーが低く。安定であることを意味しています!!
この二つのエネルギー間の値の大きさがEg エネルギーバンドギャップとなります。
半導体には電子の存在できないエネルギー帯があります。つまり安定な電子が自由に動き回るようになるには閾値 Eg を超えるエネルギーを外部から受ける必要があります。
熱励起とは!?
伝導帯は電子伝導に寄与するような自由電子の存在する領域です。価電子帯は結合に寄与する電子が存在する領域です。
伝導帯より上に存在する電子は通常自由電子として存在し、電気伝導に寄与します(電流が流れます。)
もちろん0 [K]のような極低温では、伝導帯に電子は存在しませんが、室温くらいの高温になると自由電子が存在します。
熱によって電子が励起される現象なので熱励起と呼ばれます。
価電子帯は結合に寄与すると記載しました。
原子同士は結合する時以下のように複数の軌道の内側から電子を占有していきます。
この時一番エネルギーが高いのは最外郭電子です。
そしてこの最外郭電子、例えばSiの場合隣り合うSi原子からもう一つの電子を受け取ることで共有結合を形成します。
よって結合に寄与するエネルギー帯となります。
光励起とは!?
熱は言わずもがなエネルギーですが、半導体の世界では電磁波もエネルギーになります。
波長はエネルギーに対応しています。
$$波長:λ(um)=\frac{1.2398}{E_g}$$
と計算できます。
半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光が来た時、基底状態の電子が光を吸収し伝導帯に励起されることがあります。これを光励起と呼びます。これはエネルギーの大きい短波長の光で良く起こる現象になります。
例えばガラス(SiO2 バンドギャップ 約7 eV)は紫外線(UV)を吸収し光励起する為、紫外線を通さないことで知られています。この時吸収された励起電子は熱として放出されることで基底状態に戻ります。
室内にいれば日焼けしないっていうのはこういう理由だったんですね!(よかった。。)
では「波長の長い光はどうなるのか?」
例えば可視光を考えます。
窓ガラスを通して私たちは外の景色を確認することが出来ます。つまり可視光のような長波長な光は吸収せず透過していきます!
そのイメージを下記のバンド図に示しています。
各種材料のバンドギャップを紹介
以下にメジャーな材料の室温のバンドギャップをまとめてみます。
- Si:1.11eV
- Ge:0.67eV
- GaN:3.39eV
- SiC:2.39-3.02eV
- ダイヤモンド:5.47eV
- GaAs : 1.43eV
- ZnSe:2.6eV
例えばSiの場合価電子帯の電子が伝導帯に移動し自由電子のようにふるまうためには1.11eVが必要だということが分かります。
またこのバンドギャップが大きい半導体はワイドバンドギャップ半導体と呼びます。
定義では約2.2 eV以上の半導体を指します。
ワイドバンドギャップ半導体はその特性から、パワー半導体とも呼ばれ大きなエネルギーを動かすデバイス(車用の半導体や宇宙向けの半導体)に用いられます。
まとめ
伝導帯は高いエネルギーの自由に動き回る電子が存在する領域。
価電子帯は実際に結合に寄与している安定な電子が存在する領域。
上記二つのエネルギー間の閾値をバンドギャップと呼ぶ。
$$波長:λ(um)=\frac{1.2398}{E_g}$$
波長とエネルギーは対応する。
大きなエネルギーを持った光は吸収され、低いエネルギーの光は透過する!
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