【半導体工学】デバイス不良について徹底まとめ

半導体工学

半導体デバイスは様々な材料で構成されていて、多くのチップが組み合わさって形成されています。それだけに多くの原因が起因して故障したり、不良したりします。本記事ではそのような「故障」や「不良」についてまとめていきたいと思います。

まずは前提と知っておくべき故障率に関する知識をお伝えします。

半導体デバイスの死亡率「バスタブカーブ」とは

生物の死亡率は統計的に決まっていて「バスタブカーブ」と呼ばれます。

一般的に若いうちは死亡リスクは少ないですが、生まれたて状態や高齢期には死亡率が高いです。

この年齢と死亡率の相関を見ると以下のようにバスタブカーブになると言われています。(形が家庭用のお風呂バスタブに似ているため名付けられています。)

半導体デバイスもこの故障率にあてはまるといわれており、3つの故障モードの期間が存在します。(一旦ワイブル分布を知らない人はそういうものがあるのか程度で思っておいてください。)

1.初期故障期間:ワイブル分布m<1の場合で近似

2.偶発故障期間: ワイブル分布 m=1の場合で近似

3.摩耗故障期間:ワイブル分布でm>1の場合で近似

このように期間ごとの故障率は統計的解析ができます。

故障を減らそうと思うと1と3の故障、特に1の初期故障期間を減らす必要があります。

しかし統計的解析のみでは故障を減らすことは出来ません。原因を追究する必要があります。

主要な故障メカニズム

以下でデバイスで生じる主な故障のメカニズムを紹介していきます。

エレクトロマイグレーション(EM)

金属中に電流が流れる際に、金属原子が動く現象になります。

金属原子が動くメカニズムとしては、電流印加時

・電流印加時に発生している電界によるクーロン力

・流れる電子と衝突した際に受ける力

による移動になります。

移動が非均一に生じるため、ボイド断線ヒロックウィスカを起こします。

このエレクトロマイグレーションがバスタブカーブの摩耗故障期間の故障モードの代表格になります。

例) AlのEM(エレクトロマイグレーション)

電流印加した際にAlの自由電子が放出され+をもった金属イオンになります。この際に電子による衝突と電界によるクーロン力をうけます。この時原子が動くか否かは、この力の大きさや移動先の空孔の有無が効いてきます。

移動するには活性化エネルギーを超す必要があります。この活性化エネルギーは原子の移動経路(原子が移動する経路がどのくらい動きやすいか)で決まってきます。

深くは解説しませんが原子流速(単位時間当たりに流れる原子の数)の式を以下に示します。

$$J_(gb)=\frac{δ}{d}\frac{N_{gb}D_{gb0}}{kT}Z_{gb}eEexp(-\frac{Φ_{gb}}{kT})$$

この式から結晶粒の大きさや粒界でのパラメータもEMを決める因子であることが分かります。

ストレスマイグレーション

配線とそれを囲む絶縁膜との熱膨張係数の差が原因で配線に応力がかかる現象です。

Al配線の例で説明します。最終熱処理工程で400℃の熱を加える工程を経ると

Alの熱膨張係数は(23.0×10-6/℃))

周囲の絶縁膜の熱膨張係数(0.6~3.2 x 10-6/℃)よりも大きい

つまりAlが十分に縮み切れず応力がかかってしまい、応力緩和のためAlが移動してしまうことがあります。これがストレスマイグレーションです。

TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)

時間依存のある絶縁破壊現象です。一般的に電流を遮断する役割の絶縁膜に電流経路が時間が過ぎるとともに出来てしまう現象です。

一般的にTDDBは以下の3つのモードに分類されます。

1.絶縁膜中に大きな欠陥が存在する為の劣化

2.不純物に起因する欠陥による劣化で初期故障や偶発故障期に表出

3.酸化膜本来の物性により劣化

ホットキャリアによる劣化

ゲート絶縁膜のエネルギー障壁を本来超えるはずの無い電子が、デバイスにかかる電界を増大させると大きなエネルギーをもち絶縁膜中に侵入します。この時欠陥中にトラップされたりすると空間電荷を生み出し閾値などデバイス劣化の原因になります。

ソフトエラー

α粒子や中性子など放射線を浴びることで生じる不良です。放射線粒子は遮蔽が難しく半導体デバイス内に衝突すると電子ー正孔を生成してしまうためデバイス特性に影響を異常をきたしてしまいます。

ただし配線の損傷などハードエラーとは異なり半導体自体に損傷はないため「ソフトエラー」と呼ばれます。

ポップコーン現象

高温時の水分の急激な気化によりクラックが生じる現象です。

まとめ

デバイスの不良率はバスタブカーブに従う。

デバイスで生じる主な不良モードには

エレクトロマイグレーション、ストレスマイグレーション、TDDB、ホットキャリア、ソフトエラー、ポップコーン現象などが存在する。

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